《2》榎田の第二の嘘
『ジャバルティ警部による事情聴取での発言』(174~175ページ)
●ジャパルティ警部の質問で「気になること」と「怪しいと思う人」についての発言が録音からおこしてあります。
10人の容疑者のうちで、伊野部への電話が掛かって来たときに、スープレックスクルーズのラウンジに残ってたのは光葉、榎田、輪島、浦永の4人だけです。
ここで、この4人の「気になる」と「怪しいと思う人」についての質問の答えを榎田の嘘を知るキーとなる『慌てて出て行った』と『緊張した受け答え』の二つの事柄について、その認知度を表にしてまとめてみました。
ただ『慌てて出て行った』については、お客さんから呼び出されたガイドとしては普通「怪しいと思う人」には該当しませんね。ごく普通の行動だと思います。
| 『慌てて出て行った』の発言 | 『緊張した受け答え』の発言 | 電話を「気になる」として 電話の相手を「怪しいと思う人」と思った。 | 電話が掛かった ときに居た場所 | 浦永 | ○ | × | ○ | バーカウンター | 榎田 | ○ | ○ | ○ | 伊野部の近く | 光葉 | ○ | ○ | ○ | ダンスフロアー | 輪島 | × | × | × | 伊野部の近く | ○=発言有り。×=発言なし。
ここで、分かることは
1)浦永は『慌てて出て行った』ことしか認知してないにも関わらず、伊野部への電話が「気になる」とし電話の相手を「怪しいと思う人」と感じた。
2)榎田は『緊張した受け答え』をし『慌てて出て行った』とし、伊野部への電話が「気になる」し電話の相手を「怪しいと思う人」と感じた。
3)光葉は『緊張した受け答え』をし『慌てて出て行った』とし、伊野部への電話が「気になる」し電話の相手を「怪しいと思う人」と感じた。
4)輪島は伊野部に掛かってきた電話について「気になる」こともないし、その相手が「怪しいと思う人」でも無かった。
1)の浦永は『慌てて出て行った』という取り立てて異常とも思えない行動だけしか認知してないのにも関わらず、電話が「気になる」、「怪しいと思う人」を電話の相手、としたのは「榎田とも共通意見です。」という発言があることから榎田の誘導と考えられます。
3)の光葉が榎田と同じ認知をしてるのは【《1》榎田の最初の嘘】の中で示した昇平の部屋での榎田からの記憶の誘導、刷り込みを受けたためと考えられます。
なぜなら
4)の輪島は榎田と共に伊野部の近くに居たにも関わらず、伊野部への電話を「気になる」とも「怪しいと思う人」とも思わなかったのです。
奥のバーカウンターに居た浦永にもダンスフロアで踊っていた光葉にも「気になる」「怪しいと思う人」と感じた『緊張した受け答え』を、近くにいた輪島には何とも感じなかったというのは無理があります。
もしそうであるなら、そういうこともあるという何らかの理由付けが必要でしょう。
たとえば輪島がマネージャーの仕事中でもボーっとして注意散漫なことがしばしばあるとかという記述があればともかく、そういったことは見つけられません。
伊野部は電話で呼び出されたことを、近くにいた輪島と榎田に告げて出て行ったわけだし、伊野部は『緊張した受け答え』をしてなかったと考えました。
よって、榎田の発言は嘘であり、176ページに光葉と榎田だけが事情聴取についての発言があるのも、それを象徴してます。
榎田はまさしく不安であっただろうし、光葉も榎田に誘導されて思わずした発言に何か釈然としないものを感じて、他の人の質問を気にしたのでしょう。
(2009年3月2日更新) | |